羊の夜をビールで洗う

シングルファーザーなプログラマーのワンオペ育児&暮らしのブログ。

綿矢りさ「手のひらの京」感想と、そのほかのオススメ本。

綿矢りささんの「手のひらの京」という小説を読み終えたので、感想を書いてみます。

 

 

綿矢りささんと言えば、京都の高校在学時代に「インストール」で文藝賞を最年少タイで受賞され、その後続けざまに「蹴りたい背中」で、同年代の金原ひとみさんと共に、芥川賞をダブル受賞されたのが、記憶に残っている方も多いかと(あれももう10年以上前の出来事なのですね)。

 

この「手のひらの京」は、そんな綿矢さんの地元京都に住む三姉妹の、京都での何げない日常を綴った小説です。帯には、同じく関西を舞台にした姉妹の生活ということで、谷崎潤一郎の「細雪」と対比させる文面が書かれています。(私は古典にはウトいので谷崎潤一郎は「痴人の愛」くらいしか読んでないんですが)

 

綿矢さんは、「インストール」「蹴りたい背中」の以降も、コンスタントに作品を発表されていますが、学校の中の話や、都会のOLの話とかが多くて、地元京都をテーマにしたお話というのは、意外にもこれが初めてなんですよね。綿矢さんの作品を好んで多く読んでいる私も、綿矢さんが京都出身だということを忘れていたくらい。

 

そんな好きな作家の一人である綿矢さんの、京都を舞台にした小説とあっては、読まないわけにはいきません。

 

物語の主な登場人物は、長女でおっとりしたアラサーの綾香、目立つ外見で性格もはっきりした次女の羽依、大学で研究に没頭するリケジョの凛、の三姉妹です。うん、ここまではわりとよくある設定ではないでしょうか。

 

しかし、綿矢さんが小説に書く人物の特長は、綿矢さんが小説を書く一番の原動力になっていると思われる、綿矢さん自身の狂気に近い偏執さが乗り移ったかのような登場人物が、小説のどこかに登場すること。それこそが、綿矢さんの小説の魅力であり、純文学たる部分であると、個人的には思っています。

 

この小説の中では、次女の羽依と、三姉妹の両親がそれに該当していると思います。冒頭部分で、新入社員の羽依が、会社の同僚と琵琶湖のバーベキューに行って、女性社員たちの立ち振る舞いをこと細かく観察するシーンや、三女の凛が就職で上京を決意し両親を説得するも、頑なまでに「都落ち」を拒否する両親の行動の描写に、今回も綿矢さん独特の「ねちっこさ」がよく表れているなぁ、とファンとしては楽しく読みました。

 

そのような作者のファンだけが喜ぶ、マニアック(?)な部分だけでなく、祇園祭に五山の送り火といった伝統行事が並ぶ夏の京都の光景を、地元っ子の綿矢さんが確かな筆力で艶やかに描き切っているあたりも、この小説の大きな魅力だと思いました。祇園祭も送り火も、京都に住んでいた頃には意外と満喫しなかったものですが、今年の夏は久しぶりに行ってみたいなぁ、という気にさせられましたよ。

 

というわけで、この「手のひらの京」は期待通り、綿矢りささん本来の小説の魅力と、京都というテーマが持つ魅力を両方兼ね備えた作品に仕上がっていて、どちらかに惹かれる方なら満足できる一冊だと思いました!

 

綿矢りささんは、個人的にとても思い入れのある作家さんなのですが、なんとなく当たり外れが激しい作家さんでもある気がするので(私のヒットゾーンが狭いだけかも)、ついでにここで、その他の作品で私が好きなものを二つほど挙げておきます。

 

綿矢りさ 「勝手にふるえてろ」

 

上で書いた綿矢さんのねちっこさがどっぷり乗り移っているOLの主人公が、片思いの男性(イチ)と何となく付き合った男性(ニ)の間で心ゆれ動く物語です。主人公の性格も、小説の構成も、綿矢さんらしさがシンプルに体現されている気がして、綿矢さんの作品で最も好きな作品です。

 

綿矢りさ 「しょうがの味は熱い」

 

最近読んだ中で好きだな、と思った作品で、結婚がテーマになっています。結婚に対して唐突マイペースに事を進める女の子と、なかなか態度が煮え切らない彼氏の二人が主人公になっていて、こういったすれ違いを書くのも綿矢さんは上手だなぁ、とにやにやしながら読んだ本です。

 

芥川賞受賞作以後の綿矢さんの作品は、ふつうにその辺の会社にいそうな男女を描いていることが多いので感情移入がしやすいながら、どの登場人物もやっぱり一風変わっていて読みものとしてはしっかり面白いので、スイスイ読めてオススメですよ、というお話でした。よろしければ是非〜。

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