羊の夜をビールで洗う

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羊の夜をビールで洗う

シングルファーザーなプログラマーのワンオペ育児&暮らしのブログ。

SEならきっと読んでいて胃が痛くなる?福田和代さんの「リブート!」

たまにはマニアック、というか読者のターゲットゾーンが狭い本の紹介をしてみたいと思います。福田和代さんという方の「リブート!」という小説です。

 

 

この小説は、金融系のSE(システムエンジニア)を職業とする人たちが主な登場人物となっています。この本を書かれた福田さんは、以前に元奥さんが派遣で勤めていたシステム会社でSEとして働かれていた方で、元奥さんが派遣先から貰って帰ってきたのを読んでみたら、思いのほか面白かったのでした。

 

物語は、銀行のサブシステムのプロジェクトマネージャーを務める、主人公の横田が、夜中の二時半に叩き起こされる場面から始まります。銀行のような「止まってはいけない」システムの運用を担当するエンジニアなら、あまり遭遇したくはないですが、実際に起こり得る事態です。

 

この小説の特長は、作者が元SEの方なだけあって、実際にシステム屋をやっている人なら、思わず頷いたり、現場の緊張感や殺気が伝わって手に汗かくくらい、システムトラブルの描写が詳細で正確なことです。

 

冒頭のトラブルの話では、統合された2つの銀行のシステムのデータの受け渡し処理を行うサーバーが、完全に二重化されているにも関わらず、UPSの電池切れという人為ミスによって、両方とも完全停止する、という事態が描かれます。

 

ここで、「二重化?UPS?なにそれ美味しいの?」と思われた方は、たぶんこの小説を読んでもまっっったく面白くはないかと。「え〜、金融系の基幹システムで、そんなお粗末なミスをするぅ?」とか考えた方は、続きを読んでも面白いかもしれません。

 

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この小説のもう一つの面白さは、統合された銀行のそれぞれのシステムを担当する、二つのシステム子会社の登場人物同士のせめぎ合いです。

 

例えば、二つの会社で同じシステムを運用していて、先に書いたような人為ミスによるトラブルが発生すると、どっちの会社のミスなんだ、なんて責任の押し付け合いが始まるのですが、そういった人の動きや思惑の描写もリアルです。

 

そろそろ、そんな小説の何が面白いんだ、という気になってきましたか?けど、もう少し続けますね。

 

小説には、主人公の横田の他に、もう一社の側でプロジェクトマネージャーを務める仲瀬川、という主要人物が登場します。小説では、この横田と仲瀬川のPMとしてのキャラクターの違いがうまく書き分けられています。

 

仲瀬川はガツガツしたタイプのPMで、自分のチームの重要性を上に訴えかけて優秀な人材をどんどん引っ張り込むタイプ。人のミスにもかなり厳しくあたります。一方で、横田は押しがそれほど強くなくて、チームでも和を重視したり若手を丁寧に育てるタイプです。

 

そんな相性の悪い二人が、システムトラブルが発生する度に、内心相手に苛々する気持ちを押さえながら、目の前の問題に冷静に対処しようと電話でやりとりをする...。こんなシーン、確かにある!あるわ〜と思いながら、(SEの人なら)きっと物語に引き込まれていくはず。

 

物語では、最初のトラブルが一通り落ち着くと、間髪入れずに次の大きなトラブルが発生します。なにやら通信でタイムアウトが頻繁に発生しているらしいのですが、その原因はさて如何に...?

 

この謎の不具合現象の原因を、一つ一つ問題を切り分けながら突き止めていく様子は、(SEの人なら)さながらミステリー小説のように感じられるはず!そして、不具合がスッキリ解決して迎えるハッピーエンドの爽快感といったら、あぁ!!

 

え?ここまで読んでも、全然面白さのポイントが分からない?やっぱりそうですか...。

 

けれど、ちょっとでもシステムに携わったことのある方なら、きっとドキドキハラハラしながら最後まで一気に読み切ってしまうはずなので、騙されたと思って手に取ってみてくださいな。ただし、胃が痛くなるかもしれないので、体調が良好なときに読まれることをお薦めしますが...。

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