羊の夜をビールで洗う

シングルファーザーなプログラマーのワンオペ育児&暮らしのブログ。

植本一子「かなわない」の断片的な感想。

植本一子さんの「かなわない」を読んだ。

 

 

私が新しい本を手に取るときのきっかけの半分は人からの口コミで、中でも異なる人脈から二人以上のお薦めを見たときには、特に迷わず買ってしまうことが多い。で、この本は、二人どころではない数々の方面から、お薦めや読後の感想を見かけたのだが(私の弟くんも2016年のベスト10冊に入れている)、それでも手に取るまでに時間がかかった。

 

「かなわない」は、写真家の植本一子さんが、ヒップホップミュージシャンの石田義則さんと、小さな子ども二人との生活を綴ったエッセイ、というかブログをそのままにした書籍になっている。私はヒップホップにそれほど明るくないので、ECDというミュージシャンは恥ずかしながら初めて聞いた。植本さんの写真も活動領域的に雑誌などで一度は目にしているだろうけど、もちろん名前は認識していなかった。

 

エッセイは、その植本さんが子育てについて感情のままに怒ったり、苦悩したり、他の人を好きになったりするものらしい、と最初に口コミを見かけたときにあらすじを知った。全部ではないけれど、それらの一部の光景を通り過ぎて(これは多かれ少なかれ誰しもがそうだと思う)、最終的に後処理の渦中にあった当時の私は「しばらくそーゆうのはもういいや。」と手に取れなかった。ミュージシャンと写真家、という感受性の高そうなバックグランドの夫婦の話が、自分が普段接している人間の話より、少なからず心を抉ってくることも想像できた。

 

それでも、最近手持ちに読みたいものがなくなってきて、なんとなくやっぱり読むか、と手に取った本書は、思いのほか読み進めやすかった。形式がブログそのまま、というのは本を開いてから知ったことだけど、よく考えたら最近は本以外には他の人のブログばかり読んでいたので、読みやすいのは当たりまえだ。

 

エッセイは、震災直後の日常から始まる。筆者は東京で暮らされている方で、子どもの食べ物の話が最初は多く出てくる。

 

筆者は本の中で、育児について苦痛であり向いていない、と何度も記されているが、食べ物のことは正直私よりずっとちゃんとしている。それは彼女の中で食べ物のことは「こうあるべき母親」「こうあるべき育児」の像の一部に含まれているからで、本書は「あるべき像」とのギャップからくる自己肯定感の低さと向き合うこと、が大きな一つのテーマになっている。

 

植本さんの夫である石田さんは、植本さんよりも、私よりも随分年上の人であるらしい。彼は、音楽という仕事と自身の信条から、生活リズムが一定でなかったり、頻繁に反原発のデモに出かけたりするが、それでも世間一般の基準でいえば十分な「イクメン」だと思う。(自分より17歳も上の方に使うのに適した言葉かは分からないけど。)

 

「かなわない」という言葉が向けられた一人は、この夫である石田さんである。この本は、育児の苦痛や自己肯定感と向き合う植本さんと、それをどのようにどこまで受容するのかを綴った石田さんの物語なので、似たような問題に向き合って、最終的に受容できなかった私もやっぱり石田さんには「かなわない」ということになる。

 

もし私が彼くらい一回り以上人生経験を積んでいたら、もっとキチンと対処できていたのだろうか、と月並みに考えてもみるけれど、自信はない。何だろう。結局は「これでもいい」という枠の引き方の問題なのかな。自分も意識しないようにしていて、やっぱり「あるべき像」に思ったよりも縛られているのかも、と振り返る。

 

私がミスリーディングしていなければ、「かなわない」のもう一人は、筆者がエッセイの後半で出会う漫画家の先生だと思う。筆者は、この「先生」と出会う少しまえに心療内科でカウンセリングを受けており、その内容をきっかけに始まった「先生」とのメールのやりとりが、本書の後半ではかなりのボリュームを占めている。(カウンセリングの相手が心療内科の先生ではなく、漫画家の先生であることにはじめ少し混乱した)

 

私はカウンセリングの専門家ではないので、そのやりとりの内容についてとやかくは言えないのだけど、あとがきで筆者本人がそのやりとりを振り返って、

日記にも書いたように、あんな風に人と密度の濃いやりとりをしたのは、おそらく先生が初めてだったと思う。普通のカウンセリングではないので、一般的ではないけれど、先生は「一時期でもいいから、とにかくその人につきっきりになって向き合ってあげる時期が必要なんです」と言っていた。

と綴られた言葉には、私も結婚よりはるか昔に同様の経験をしたので同意できる。筆者は本書の中でとにかくもがいて、自分でいろいろ当たってみて、その先に(通常の医師ではない)その先生をみつけて、彼女なりに腑に落ちた場所に到達している。そのくだりが、ツッコミどころの多い本書に、そこはかとない納得感を与えている気がした。

 

 

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以上、こういう本の感想をマジメに書くことが、本当〜に苦手な私ですが、自分なりに読んで感じたことを断片的ですが書いてみました。

 

この本を最終的に読むことにしたきっかけは、phaさんがこの本を2016年のおすすめ本に入れていたことでした。先に書いたとおり、前からこの本のあらすじは知っていたので、(多少失礼な書き方なのですが)自分と生き方が大分異なる彼が、この本のどのような部分に響いたのか、に興味が沸きました。

 

ブログのホットエントリーなんかもそうですが、多くの口コミを集める本って、その人なりにさまざまな読み方や感じ方ができる本、ということなのではないかと思います。一年近く敬遠していたこの本ですが、読んでみてやっぱりこの本もそういう類の本なのだということは分かりました。

 

最近、ブログばかりにかまけていて全然本を読めていなかったので、三連休の間にこの本だけは読了したいなと思っていたのが、なんとか読み切れて良かったです。

 

おまけ

読みながら思い出していた、過去のエントリはこちら。

 

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