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読書のプロ、出口治明さんによる、児童書からはじまる読書ガイド~「教養は児童書で学べ」

「教養は児童書で学べ」という、子育てブロガーには興味深いタイトルの新書を読んだので、読書レビューを書いてみます。

 

 

この本を書かれている出口治明さんという方は、ネット生命保険会社の「ライフネット生命」を創業された方です。一方で、出口さんは週に5~6冊の本を読む、読書家としても知られ、「本の「使い方」」など、社会人が読書を活かすために役立つビジネス書を多数出版されています。

 

出口さんの読書のポリシーを一言で言うと、「古典を大事にする」ことだと思います。長い時の試練を経て残った本は、たとえ難解で、読み解くのに時間がかかっても、それを読むことで必ず多くの知見を得られる、という考え方をお持ちのようです。私は、それほど古典をしっかり読んでいないので、肝に命じたい考え方です。

 

そんな出口さんが、今度は「児童書」をテーマに読書本を書かれているとあって、「これは読まないわけにはいかない!」と手に取ったのでありました。

 

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さて、この本では10冊の児童書がそれぞれの章に分けて紹介されています。古典好きな出口さんのセレクトだけあって、どれもちょっと本が好きな人なら、一度は名前を聞いたことのあるものばかり。

 

例えば、最初の章では、あの絵本の名作「はらぺこあおむし」が採り上げられています。

 

 

え?あんな短くて分かりやすい絵本のことなんて、わざわざ解説されなくてもだいたい内容なんて分かってるって?そう思ったあなたは、読書の水先案内人としての出口さんをちょっと過小評価しているかもしれません。

 

葉っぱの上にあるのは、あおむしの卵です。

 

この小さな点から、すべてが始まります。これは将来、子どもが宇宙のビッグバンを勉強するとき、最初に特異点(重力の固有の大きさが無限大になってしまう点)があったという話につながるかもしれません。

 

『アルファ』(イェンス・ハルダー、国書刊行会)というおもしろい本があります。全三巻で、万物創世宇宙、地球、生命の歴史を絵だけで描こうとした本です。

 

出口さんは、こんな調子で、このページ数の少ない絵本からも、本のテーマから連想される他の名著を紹介したり、著者エリック・カールの生い立ちに遡りながら、この絵本にいかに世の森羅万象が凝縮されているのか、を解説していくのです。

 

(この本、高いけどとても気になるのでそのうち買っちゃいそう。)

 

私は、そもそも「アルファ」という名著(奇書?)を知りませんでしたし、知っていたとしてもはらぺこあおむしから連想することはできなかったと思うので、「さすがは出口さん!」と思いました。

 

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次の章で解説される「西遊記」では、はじめに、単純な勧善懲悪ではない西遊記のハチャメチャさに触れた上で、儒家と道家を源流とする中国のエリート社会と非エリート社会の二面性や、西遊記の官僚社会に対する風刺的側面に言及しています。

 

 

孫悟空が、自分ばかり働かされている、と怒っている場面ですが、組織ではよくあることです。もしかすると、小学校でもあるかもしれません。学級委員は命令するだけで何もやらないとか。こういう側面も、さらに『西遊記』をおもしろくしています。

 

中国人は、直に接してみるとみんな親切でいい人ですが、猪八戒や沙悟浄のように無責任なところもあります。ただし彼らの無責任は、日本人の無責任とは少し違います。彼らは本音で生きているから無責任なのです。

 

出口さんは、続く「アラビアン・ナイト」を解説した章でも、アラブ文化の重要性が西欧の国々の間でどのように変化してきたのか、を広範な視点から語られていますが、このような国際的な視点も、ライフネットを立ち上げる前は大手生命保険会社で豊富な海外経験を積まれていた、出口さんならではのものと言えるでしょう。

 

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後半では、ここ半年ほど、わが家でも夜の読み聞かせの定番になっている「エルマーのぼうけん」シリーズが採り上げられています。

 

 

「エルマーのぼうけん」では、出口さんは、本の中で描かれるエルマーの「リアルな子供っぽさ」に着目されています。

 

ピンチになっても泣かないで、どうしたらいいのかを必死で考えるエルマー、数字に細かいエルマーなど、大人が「子供とは、か弱く純粋であるもの」と先入観で捉えている子どもとは違う、子どものリアルさがこの本には書かれていると指摘するのです。

 

私は、何回もこの本を読み聞かせていながら、そのような視点はなかったので「なるほどなぁ。」と自分の実感と照らし合わせて、大いに共感を得ました。

 

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以上、読書の「プロ」である出口治明さんによる、児童書を起点にした読書ガイドは、期待に違わず、やっぱりたくさんの気づきが得られる内容だったので、記事にまとめてみました。

 

本では他にも、「ギルガメシュ王ものがたり」や「モモ」など、これから子どもに読んでほしい本の解説も多く掲載されていたので、この先の子どもの読書計画を練るのに大いに役立ちました。

 

既にたくさんの本や絵本を子どもに読み聞かせている熱心な親御さんも、子どもにどんな本を読ませたらよいのか分からなくて迷っている方にも、「へーっ!」っと頷ける内容がふんだんに盛り込まれた本だと思うので、ぜひ一度手に取られてみてはいかがでしょうか?

 

 

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