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羊の夜をビールで洗う

シングルファーザーなプログラマーのワンオペ育児&暮らしのブログ。

山崎ナオコーラさんのコンプレックスの消化の仕方や夫婦観が素敵。

思考 読書

山崎ナオコーラさんの最近のエッセイや小説を読んでいて、彼女のコンプレックスの消化の仕方や夫婦観が素敵だなぁ、と思ったのでそのことについて書いてみます。

 

山崎ナオコーラ  「人のセックスを笑うな」

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山崎ナオコーラさんと言えば、文藝賞を受賞したデビュー作「人のセックスを笑うな」が、その内容だけでなく、タイトルや著者のペンネームも含めて強烈なインパクトがあって、作家として鮮烈なデビューを飾られた印象が強く残っています。この小説は、蒼井優さんが主演で映画にもなりましたね。

 

山崎ナオコーラ  「太陽がもったいない」

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しかしその後の作家生活の中では、いくつかの葛藤やコンプレックスを感じる場面があったことが、エッセイなどから読み取れます。家庭園芸の話題が中心のエッセイ「太陽がもったいない」の中では、園芸の話題に混じって、さりげなくそれらの葛藤に対する一節が綴られています。

 

自分の文章が世の中に役立っている感じがしない。趣味で好きなことをやっている、と周りから思われている。社会人として、自分のできることをして、新しい社会を作っていくために活動しているつもりだったが、趣味っぽく捉えられることがたまらない。三十歳になった頃から、小説家の「社会人っぽくないところ」に悩むようになってきた。

 

山崎さんはデビュー作以降も、たんたんとしたペースで小説を発表されていて、その幾つかを私は好んで読んでいたので、私にはこの一節は、「山崎さんのような方でもこのような感じ方をされるのか〜」と意外に思われました。

 

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山崎ナオコーラ  「かわいい夫」

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ですが、山崎さんはその葛藤から目を逸らすでも逃げるでもなく、きちんと受け止めたうえで消化して、あらためて自分のやりたいことや進むべき道はこれだ、と確信されているんですよね。「かわいい夫」は書店員をされている夫との、ゆるやかな夫婦生活を綴った珠玉のエッセイ集ですが、その中にこんな一節が綴られています。

 

先鋭的な作品を書くわけでもなく、たくさんの読者に歓迎される作品を書くわけでもない、私のような作家が「純文学」の分野で仕事をする意義はどこにあるのか。

そういう作家は淘汰されるべきで、踏み台というところに価値を見出せば良い、という意見もあるのではないかとは思う。だが、私としては、そういうところで、社会に役立つこともできるのではないか、未来に日本文学史の襷を繋げる一助になることができるのではないか、と自分のやるべき仕事をもっと探りたい思いがある。

 

この二つのエッセイの中で山崎さんが、自らが持っているコンプレックスとそれに対する感じ方、作家という自身の職業に対する純粋な決意を、包み隠さず素直な表現で書かれているところに、私はとても共感と好感を覚えました。

 

山崎ナオコーラ  「昼田とハッコウ」

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書店員が主人公で、おそらくは吉祥寺の街をモデルにした小説、「昼田とハッコウ」では、作家・本屋・書店員の三者の繋がりや、書籍の電子書籍化による本の流通の変化を描くことを通じて、彼女なりの本への思いが反映された箇所も多々あり、小説としての面白さだけでなく、本の未来についても考えさせる内容になっていると思います。

 

そんな山崎さんですが、今年の6月に「美しい距離」が久しぶりの芥川賞候補となったことが発表されています。発表は来週の7月19日ということで、賞の行方が密かに気になっています。

 

山崎ナオコーラさんについて、デビュー作の「人のセックスを笑うな」の印象で止まっている小説好きの方には、ぜひ山崎さんの最近の著作を読まれることをお薦めします。きっと初期の頃の作品とは違った印象を持たれると思いますよ。

 

 

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