羊の夜をビールで洗う

シングルファーザーなプログラマーのワンオペ育児&暮らしのブログ。

好きな原則

仕事をするうえで僕の好きな原則の一つに、
 
「すぐれた商品は顧客の顕在ニーズからは生まれない」
 
というのがあります。
 

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  (石川県金沢市:金沢21世紀美術館)
 
どういうことかというと、よい商品を生み出すには、すでに世にある商品から浮かび上がるような、ああしたいこうしたいというお客の目に見えている要望を改善するだけではダメで、お客の目に見える要望から透けて見える、まだお客が気付いていない隠れたニーズを上手い具合に具現化してこそよい商品が生まれる、という考え方です。
 
そうやって生まれた商品は、世に出た当初こそ世間の反応は「???」となってしまいますが、しばらくして気付いたらみんながそれを使っていた、というものになります。
 

www.amazon.co.jp

 
これを体現した商品として最も有名なものはAppleのiPodでしょう。発売当時、せいぜい1つのプレーヤーで聞ける曲数がCD数枚分だったところに1000曲を搭載できるハードウェアを用意し、楽曲の管理が従来より格段に優れた(後に音楽販売の役割も兼ねる)ソフトウェアと組み合わせて売る。1000曲を搭載できるプレーヤーも、それを管理するためのソフトウェアもお客がその時点でその仕様そのままを望んでいたわけではありません。ですが、今では音楽を聴く形態としてそれがごく当たり前のものになっています。*1
 
もう一つ、BtoBの分野の例として、ある会社のある商品の例を、Before(商品が出る前の状況)とAfter(商品が問題を解決した方法)の対比の形で挙げてみます。
 
Before:
  • 機械部品の製造後検査で各部位の大きさや長さの検査をするときに、検査者が一カ所一カ所ノギスで測っていた。
 
After:
  • 部品の形状と長さをパターンとしてあらかじめ装置に登録しておく。
  • 製造した部品を装置のガラス台の上に適当に載せて下から光を当て、その影絵を上からカメラで撮る。
  • あらかじめ登録しておいたパターンとカメラで撮った影絵を、回転などの処理を加えつつ照合して正しい大きさで製造できているかどうかを判定する。
  • 結果、ノギスが不要になり、誰でも適当に部品を置いて即座に検査できるようになる。
 
この商品は発売直後から大いに売れて、一つの事業部の主力商品となるまでに成長しているそうですが、この場合も決してお客の現状の問題解決からスタートしたのでは生まれなかった商品と言えるでしょう。
 
もちろん、お客が目に見えている課題からアプローチするのではなく、潜在的なモヤモヤしたニーズからスタートしてそれを商品として具現化するには、より困難な技術的課題を数多くクリアする必要があり、そこが技術者としての腕の見せ所、となります。けれど、その困難を乗り越えた人だけが「技術によって世の中を変えた」という実感を得られるのだと思います。
 
僕自身はまだまだこのような商品の開発に直接関わったり、リードした経験が乏しいですが、残りの技術者人生の中で一つでも多くそのような仕事を生み出せたら、という思いでこの原則を胸に持ち続けています。

*1:近年、SpotifyやApple Musicのリリースによって、また音楽との関わり方は変わりつつありますが。

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